意匠設計者に必要な「〇〇力」12選【現役設計者が解説】

stone

建築家を目指しているけどどうすればなれる?

設計さえできれば建築家になれる…?

とりあえず設計課題は頑張っているけど…。

建築家には実は「設計力」以外も必要です。
実際に社会に出てるとそのことを強く実感します。

この記事を読むことで、あらかじめその能力を鍛えておくことができます。
学校では教えてもらえないことばかりですので、今のうちから備えておけば実際に社会に出る頃には大きなアドバンテージになっていることでしょう。

sen

今回ご紹介する意匠設計者に必要な「〇〇力」12選は、以下のように様々な経験をした上で選んだものです。

  • 大学・大学院に6年間在学
  • 日建設計に数年間在籍(国内最大手事務所)
  • 現在設計者として独立
  • 複数のアトリエ事務所と共同経験あり

必要なのは設計力じゃない?」という意見が多いことでしょう。

もちろん設計力が重要というのは正しい認識ですが、実際にはそれ以外にも多くの能力を要求されるというのが実情です。
正直、設計力だけでは建物は成立しません。

今回紹介する〇〇力を持たないと、設計者として大きなディスアドバンテージを背負うことになります。

ここから意匠設計者に必要な「〇〇力」12選を紹介します。

➡︎ 設計力の鍛え方はこちら

➡︎ 設計課題と実務の違いはこちら

当記事の内容

アイディア力

まずは、『アイディア力』です。

設計課題でも、コンペでも、実務でも、あらゆる場面で意匠設計者に求められる能力の筆頭です。

『アイディア力』は色んなタイミングで活躍します。
例えば以下です。

初期:プロジェクト構想のアイディア
中盤:具体的な計画アイディア
終盤:実現するための技術的なアイディア

常識に囚われず、柔軟な思考によって次々にアイディアを生み出す能力は、魅力的な建築を実現するために欠かせません。

自信がない…。という方に向けて、『アイディア力』が身に付く本を2冊紹介します。

sen

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➡︎ センスを身につける具体的な方法はこちら

空間把握力

「空間」は、スケール・プロポーション・色彩・マテリアル…、その他多くの要因によって成立しています。

建築家はそれら全てに敏感じゃないといけないと思います。

シェフでいう味覚、作曲家でいう音感、そうしたものに対応するのが建築家の場合は「空間把握力」です。

「空間」という単語は非常に抽象的なので、言語化が難しいものです。
言い換えると「雰囲気」とか「空気感」とかが近いかも知れません。

以下の本が、「空間」を捉える手助けとなるかも知れません。

というかこの本は、物凄く良い本なので建築学生全員に読んで頂きたいです。

sen

私は聖書のように、常に目の届く机の上に置いています。

造形力

ある種、「空間」と対をなすのが「造形」です。

「空間」がヴォイド(空洞)を指すのに対して、「造形」は物質そのものの部分を指しています。

彫刻的に形状を生み出す能力、またそれを成り立たせるための構造感覚が建築家には必要です。

建築はリアルな物質で、質量のあるものである以上、造形を伴います。

建築界の流れとしては、造形を積極的に行うことを避ける傾向にありますが、やはり美しい造形を生み出す能力は建築家に必要だと考えています。

設計課題の評価にしても、あまり言葉にはしないかもしれませんが、当たり前に造形の審美性は評価に大きく影響しています。

➡︎ 設計課題の3つの評価軸はこちら

論理的思考力

多くの要素を処理し、一つの形に収斂していく。それにはやはり論理的思考力が必須です。

「建築は感性と理性の高次元での統合である。」というのは槇文彦さんの言葉ですが(ちょっと違っていたらすみません。)、「理性」にあたるのが「論理的思考力」です。

ときに直感や感情ではなく、きちんと筋道立てて論理的に思考する必要があります。

sen

実務を行うと、よりこの能力の必要性を実感します。
将来的にも大活躍する能力です。

「論理的思考力」とは「客観性」でもあります。

例えば、
自分で捻り出したコンセプトが正しいか?
自分の設計内容は間違っていないか?
それを客観的に判断するのも「論理的思考力」です。

「論理的思考力」を確実に鍛えるには読書が一番です。
そのときの自分が少しだけ難しいと感じる難易度の本をたくさん読むことで能力が向上します。

➡︎ 難易度を5段階で記載した建築本100冊リストはこちら

探求力

貪欲にこれでもか!というくらい計画を探求していく力です。

職人のようにこだわりをもって、自分を納得させるのが一番厳しいという人が建築家に向いていると思います。

こだわり抜かれたものには、心が動かされます。

突き詰められて考えられたものは、第一印象から別格の雰囲気を纏っています。
分かる人には一瞬で見抜かれてしまいます。

設計課題にしても、突き詰めて考えられたものかどうかは、パッと見で分かる気がします。

不思議なもので、並んだ設計課題を数十秒眺めただけでどの案が優秀賞をとるか高確率で当てることができます

大きな模型で検討したり、ものすごく細部の図面を考えたり…。
労力が掛かりますが必要なことのように思います。

➡︎ エスキスの進め方やコツはこちら

プレゼン力

コンセプト作成能力表現力がこの項目に当てはまります。

いかに自分の設計の良さを人に伝えるか?

この部分の能力が欠けていて、損をしている人を何人も見てきました。

sen

正直、私の初めての設計課題のプレゼンテーションは大失敗でした。審査員に自分の伝えたいことが伝わらないし、質問への受け答えも全然的外れ…。

そこで「プレゼンテーション」を勉強しようと、学部1年生のときに手に取ったのが以下の本です。(当時は第1版)

世界的ベストセラー「プレゼンテーションZen」の改訂3版。
今改訂でも、著者ガー・レイノルズ氏による「プレゼンテーションZen」の基本原則「抑制」「シンプル」「自然さ」はそのままに、TEDx等でのプレゼンサンプルも写真・スライドともに多く引用し、最新情報で内容をアップデート。また、スティーブ・ジョブズに学ぶ教訓やライブエイドでのクイーンのライブに学ぶプレゼンコラムなど、「伝わる」プレゼンのためのヒントも満載。

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この本を読んで以降、ガラッと自分のプレゼンは変わりました。
設計課題で成果を残すことに大きく貢献してくれた本です。

コミュニケーション力

実務となると、多くの関係者とコミュニケーションをとることになります。

意匠/構造/設備/施工者/メーカー/クライアント…

意匠設計者の大きな役割の一つは、この方々の「まとめ役」です。

sen

大規模プロジェクトになれば、関係者が50~100人になることもあります。

年齢も役割もバラバラな多くの人々の間に立って、皆が向かうべき方向を示しながら、まとめていきます。
たとえ、その場で最年少だって関係ありません。

「コミュニケーション力」を高めるには以下の2冊がオススメです。

sen

大げさじゃなく人生を変える2冊です。

あらゆる自己啓発本の原点とも言うべき本書は、1937年に初版が発行されると瞬く間にベストセラーとなり、累計で1,500万部を売り上げた。『How to Win Friends and Influence People』は初版の発売当時と同じように今日でも十分通用する内容となっているが、その理由は、著者のデール・カーネギーが決して変わり得ない人間の本質を理解していたからに他ならない。

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伝え方にはシンプルな技術があります。

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マネジメント力

意匠設計者の大きな役割の一つは、多くの関係者の「まとめ役」という話をしましたが、

そのときに必要なのが「マネジメント力」です。

複数人のグループや団体、会社という単位で成果を上げるときに必要な能力です。

学生の方に身近な例でいうと、

  • グループ課題
  • 後輩をお手伝いに呼んだとき
  • 研究室でプロジェクトに取り組むとき

こうした際にも必要になります。

もちろん、独立して自分の事務所を持つのであれば、必須なのは言うまでもありません。

オススメは以下の本です。
シリーズものですが、この②だけでも大丈夫です。

ベストセラー『ビジョナリーカンパニー』の著者が7年ぶりに書き下ろす 飛躍企業11社の秘密!!

飛躍を遂げた企業11社をそれぞれの業種で競合関係にある企業と詳細に比較・分析。飛躍する企業やその経営者の特徴を解説している。

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洞察力

設計課題やコンペの課題文から潜在的な意図を読み取る力。
敷地調査から場所の特性を読み取る力。
クライアントの要望に潜む根本的な欲求を読み取る力。

こうした洞察力が設計者には必要です。

ただ目の前の情報を眺めているだけではなくて、常に深読みするクセをつけておくと良いと思います!

これも他の多くの能力と同じく「読書」で身につきます。

➡︎ 本質的な内容を学べる建築本100冊リストはこちら

調整力

与条件を踏まえた上で、プランニングをする能力。

あるいは

コスト・法規・スケジュールといった現実的な制約を把握し、全体を俯瞰しながらコントロールしていく能力。

こうした「調整力」が建築家には必要です。
石上純也さんも「設計は調整がほとんど」というようなことを雑誌の記事で仰っていました。

地味な能力のように思えるかもしれませんが、この力あってこそ華やかな設計ができるのだと思います。

判断力

設計をしていると、何十回、何百回、もしかしたら何千回もの選択をしなければなりません。

1階建てにする?2階建てにする?
木造?鉄骨造?RC造?
仕上げは?
窓は付ける?
扉の大きさは?
取手のデザインは?

もうあげたらキリがないくらいに決めることがあります。

皆さんご存知の設計課題のときもそうですよね。

コンセプトはこれで良いのか?
このアイディアで良いのか?
プランニングはおかしくない?
どういう模型表現にする?

➡︎ エスキスの進め方やコツはこちら

体力

最後は「体力」です!

おそらく皆さんも課題やコンペで徹夜をしたことがあると思いますが、半端なく体力を使いますよね…。

活躍されている建築家の方々を見ていると、みんなエネルギーに溢れています。

食生活を整えて、適度に運動しましょう!!

まとめ:「〇〇力」12選の振返り

全て意匠設計者にとって大切な能力です。

アイディア力
空間把握力  
造形力 
論理的思考力
探求力  
プレゼン力
コミュニケーション力
マネジメント力
洞察力
調整力
判断力
体力

設計力が最も重要ではありますが、それ以外の能力に欠けていると足を引っ張ってしまいます。
せっかく設計力を鍛えていても、思ったようにその能力が活かせないなんてことが良くあります。

「〇〇力」12選を頭の片隅に置いて、意識的に成長できるようにしておけば、社会に出てから活躍できる可能性が高まります!

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プロフィール

senのアバター sen 読書好きの建築家

建築家を目指す建築学生に役立つ情報を発信中です。
大学・大学院ともに建築学科を卒業。
卒業後は日建設計に入社し数年間勤務。
設計者として独立。

たまにInstgramで質問コーナーをやっています、
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