建築のコンセプトの考え方と事例紹介【設計課題の評価を上げる方法】

conceptual art

設計のコンセプトの考え方が良くわからない…

良いコンセプトが思い付かない…

コンセプトの具体例が知りたい!

設計課題においてコンセプトはとても重要です。

コンセプトが思い付かなかったり、冴えないコンセプトだと「頑張って設計したのに全然評価されない」という状況に陥ってしまうこともよくあります。

sen

特に初心者はなんとなくコンセプトを決めて失敗することが沢山あります

そこでこの記事では、建築学生向けにコンセプトの失敗しない考え方と事例紹介を行います。

この記事を参考にしてコンセプトを作成すれば、提案のクオリティが上がり設計課題で失敗することはないはずです。

当記事の内容

コンセプトとは

コンセプトは直訳すると「概念・観点・考え方」となりますが、
コンセプトを立てることで、下記のような効果があります。

自分の頭の中を整理できる

プレゼンテーションがしやすくなる

➡︎さらにコンセプトという用語自体の解説を読みたい方はこちら

言語化をして頭の中を整理できる


コンセプトを立てることで自分の頭の中を整理することができます。

建築はとても多くの与件があり複雑です。

複雑なものをそのまま設計案に変換しようとすると頭がこんがらがり、
何をしたいのか分からなくなってしまいます。

そこで自分の中で特に優先すべきキーワードを挙げて、それをコンセプトに据えることで優先順位がつき提案にまとまりが生まれます。

sen

設計案のイメージが湧くようになり、設計を進めやすくなります

基本的に形状も空間も配置も、すべての検討をコンセプト目掛けて行うことで目的が明快な設計案となります。

➡︎設計案の進め方やコツはこちら

プレゼンテーションがしやすくなる


コンセプトは全体像を示すテーマとも言い換えられます。

設計案を説明するときに、

「この部屋は◯◯で〜」
「庭は△△で〜」
「屋根は□□で〜」

と場所ごとにバラバラな説明をしても、
聞いた側は結局何がしたいんだろう?と頭に入ってきません。

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まずは全体を示すテーマを説明して、その上で個々の場所の説明に移っていけば、聞く側も理解がしやすくなります。

プレゼンテーションで他者と共有するためには、全体像を示す必要があります。

appleの製品発表を見ると物凄く内容が簡潔にまとめられていますよね!
TEDのプレゼンテーションなんかも非常に勉強になるので、ぜひご覧になってみてください。

➡︎設計課題で評価される方法はこちら

コンセプトは漠然としすぎていてはいけない


コンセプトは全体を示すテーマですが、
あまりにも広範なことを示していたり、漠然としていると設計案の内容が伝わりません。

例えば椅子の説明をするとしましょう。
「座りやすい椅子」というざっくりとしたコンセプトを掲げるよりも、
「体にフィットする形状の椅子」とか
「素材を自分でカスタマイズできる椅子」とか
「人間工学に基づいた椅子」とか
具体性を持たせた方が聞き手がイメージしやすいですよね。

sen

頭の整理にもなるしプレゼンテーションもしやすくなります。

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課題中盤〜後半に活用すれば評価アップ間違いなしです!

コンセプト作成の手順

コンセプト作成は自己流で行なっている人がほとんどだと思いますが、
間違った手順だといつまでも内容がまとまりません。

相手に伝わらないどころか、自分でもやりたいことが理解できていないことも多々あります。

コンセプト作成の目的を念頭において手順を踏みましょう。

自分の頭の中を整理できる

プレゼンテーションがしやすくなる

sen

この記事を見ながら手順を意識してコンセプトを作成してみましょう

STEP
与件を洗い出し

設計内容に影響がありそうな与件を列記しましょう。
敷地形状・土地の歴史・気候・方角・眺望・用途・大きさ・高さなどに関してできる限り仔細に観察して書きましょう。

ざっくりとグルーピングすることと、具体的に書き出すことがコツです。
一見関係なさそうなことが大きく設計内容に影響を与えることもあるので取りこぼしに注意です。

STEP
キーワードの洗い出し

設計上重要になりそうな言葉を、一旦与件を意識しすぎないように列記しましょう。
抽象的なことから具体的なものまで、いろんな次元の話が混ざって構いません

「快適性」「幾何学」「一人の場所」「自然の享受」「回遊性」「多世代交流」…

みたいな感じで思いつく限り自由に書きましょう

あまり思い付かない〜という人もいると思いますが、その場合は雑誌を読んでインプット量を増すことで解決できます。

➡︎おすすめ建築雑誌とその読み方はこちら

STEP
コンセプトの仮決め

与件とキーワードを並べて見比べ、なんとなく関連できそうな部分を見つけましょう。
与件の特性を生かしてキーワードを成立させるというのが王道パターンだと思います。

この関連できそうな部分からコンセプトが生まれる可能性が高いです。

あとから変わることが前提で、コンセプトを仮決めしましょう。

sen

この時点の仮決めしたコンセプトがそのまま最終コンセプトになる可能性は低いので、現段階で思い悩まずとも大丈夫です。

STEP
設計案の仮作成

コンセプトという名の目標に向かって実際に設計の手を動かします。
スケッチをしたり模型をつくったり、図面を描いたりしましょう。

与件とキーワードの間を埋めるのが設計という意識で望むと良いでしょう。

ここまで言葉だったものに具体的な形を持たせるのがこのステップです。
素直にコンセプトに沿ってつくってみましょう。

STEP
コンセプトの再考

仮作成した設計案を客観的に眺めてみましょう。
この時点で納得のいく案ができている人は少ないでしょう。

仮案を眺めて発見した良いところも悪いところも全て大切な学習材料です。
いろんな視点から徹底的に観察しましょう。

そしてそこで発見したことをコンセプトに還元して修正を加えます。
場合によっては丸々コンセプトを作り変えてしまいましょう。

STEP
設計案の再考

修正されたコンセプトを元に再度設計案を作成します。
はじめに作成した設計案の模型やスケッチがある場合、(後ほど並べて見比べるために)それを修正するのではなくて別で一から作成しましょう。

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5⇔6を何度か繰り返し

コンセプトと設計案は合致度が大切です。
この2つに乖離があると意識的に設計することが困難ですし、説明も支離滅裂になります。

そのためにはコンセプト再考と設計案の再考を繰り返し往復することが最も有効です。
この回数が多いほど合致度は向上します。

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設計課題の終盤には模型やスケッチがずら〜っと並んでいる状態になります。

STEP
コンセプト & 最終設計案の完成

着実に積み上げられたコンセプトと設計案が完成します。
自然と説得力や完成度の高さが滲み出ているはずです。あとは自信を持ってプレゼンしましょう!

コンセプト作成時の失敗例

コンセプト作成時の失敗例を3つ紹介します。
9割以上の人がどれかに当てはまっているといってもよい項目ですので、すべて頭に入れておきましょう。

コンセプトが設計内容を示せていない

コンセプトを後付けしている

コンセプトで設計を縛りすぎている

コンセプトが設計内容を示せていない


コンセプト・説明内容と設計案はシビアに合致していないといけません。
合致していないということは、自分の案に関して考え抜けていないということです。

高評価を得るためには、コンセプト・説明内容と設計案が必要十分条件の関係にある必要があります

sen

手を抜いてしまう人が多い印象ですが、優先的に時間を掛けるべき項目です

コンセプトを後付けしている


コンセプトの後付けは超上級者向けです。
よっぽどの卓越した言語化能力のある人でないとできません。

コンセプト・説明内容と設計案の合致度が非常に重要と話しましたが、後付けで合致度を確保することは非常に困難です。

作成の手順で解説したように、早めの段階から設計案とコンセプトを並行して考えるようにしましょう。

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本当に合致度は重要です!
95%くらいの学生案はこの部分の詰めが甘く評価を下げています

コンセプトで設計を縛りすぎている


コンセプトの明快さ、説明のしやすさを優先しすぎて設計案の良さが損なわれているケースがあります。

合致度が重要と繰り返し述べていますが、それと同時に、設計案は一切の説明がなくとも魅力を感じるものでなければいけません。

合致度が高いことは素晴らしいことですが、設計案がそもそも良くないようであれば本末転倒です。
逆にいうと、コンセプトを表現できている設計案が良くないということは、コンセプト自体が失敗しているということです

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コンセプト⇔設計案の往復戦法はこの点でも有効です!

➡︎学生が失敗しやすいポインとをまとめた記事はこちら

コンセプトにつながるキーワード事例紹介

ここからは、頻繁に使用されるコンセプトにつながるキーワード(テーマ・視点)を紹介します。
頻繁に使用されるということは、建築にとってとても大切なテーマということです。

今回紹介するキーワードはベースの知識として頭の片隅に置いておきましょう。
設計の際に手が止まってしまい困ったら、これらの視点から設計案を考えてみれば突破口になるはずです。

sen

すべて語ると何万文字あっても足りないので、一言ずつコメントをしていきます。キーワードを示す建築や建築家、書籍も紹介しますのでセットでご覧ください。

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コンセプトはこれ以外にも沢山ありますので、囚われる必要はありませんよ!

コンセプトの考え方や具体例の解説してきました。コンセプトは設計の根幹部分であり、この根幹は絶対に間違えられない大切な部分です。

コンセプト選定や設計案との整合性はなんとなくで行わずに、時間を掛けて取り組みましょう。

コンセプトとも密接に関わってくる設計課題の重要なポイントを以下の記事で解説しています。
➡︎【超根幹】設計課題は3つの評価軸から成っている

sen

おそらく誰も言語化していない設計課題の評価軸を解説しています。
設計課題で有利になること間違いなしです。

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プロフィール

senのアバター sen 読書好きの建築家

建築家を目指す建築学生に役立つ情報を発信中です。
大学・大学院ともに建築学科を卒業。
卒業後は日建設計に入社し数年間勤務。
設計者として独立。

たまにInstgramで質問コーナーをやっています、
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