■ ダイアグラムってなに?必要なの?
■ なんとなくダイアグラムを作っている…
■ 提案をわかりやすく説明できない…
建築のダイアグラムは設計を前進させるものであり、プレゼンテーションの有効な手段です。
この記事を読んでダイアグラムの作成方法が身に付けば、設計内容が良くなり、プレゼンも一段階レベルアップします。
学部〜院の通算成績(平均順位)で1位となった私もダイアグラム作成にはとても力を入れていました。
いま振り返るとダイアグラムの良し悪しは順位に直結していました。ダイアグラムの出来がイマイチのときは思っていた順位にはならなかったし、自信のあるダイアグラムが作成できたときはかなり良い評価をもらうことができました。
ダイアグラム作成は設計課題のための必須スキルです。
この記事を読めば具体的な作成手順まで知ることができるので、あとは皆さんが設計課題で実践するのみです!
これまでの記事やinstagramの設計力を上げる方法の総まとめ記事です。体系的に学べます。
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課題中盤〜後半に活用すれば評価アップ間違いなし。
ダイアグラムとは?
そもそもダイアグラムとは何かを簡単に説明すると、
「設計内容の成り立ちをシンプルに図式化したもの」となります。
良いダイアグラムは設計内容の全容あるいは一部を濃縮して結晶化したものだと思います。
良いダイアグラムは複雑な情報を無駄なくシンプルに分かりやすく伝えてくれます。
設計課題においてはとくに建築の「形式性」の部分を図式化することが定番です。
基本的にあまり文字は使わず、2Dや3Dの簡略化された図によって直感的に成り立ちを理解できるようにします。
ダイアグラムはシンプルで誰でもつくれそうな見た目をしていますが、意外と良いダイアグラムはつくるのが難しいのです。
本当に良いダイアグラムは全体の中でほんの一部です。
単純そうに思えて奥深いダイアグラムについて深掘りしていきましょう
ダイアグラムは必要?
ダイアグラムは図面などと違って提出物として必須ではないことがほとんどでしょう。
ですがダイアグラムを使わないで講評会に臨むのは、革靴で登山に挑むようなものです。
ダイアグラムは絶対活用しましょう!
具体的にダイアグラムの主な効果を3つご紹介します。
○ 設計内容が整理できる
○ 視覚的・直感的にも理解できる
○ 内容が印象に残りやすい
設計内容が整理できる
ダイアグラム作成 = 内容まとめの作業 ですので、作成過程において設計者の頭の中も整理されます。
基本的にプレゼン資料として準備するダイアグラムですが、まずは何より自分自身が理解していないと他人にはなおさら伝わりません。設計者自身の理解が曖昧だとまとまりのないダイアグラムになってしまいます。
良いダイアグラムがつくれるときは、設計内容をしっかりと整理できているはずです。
私は設計の序盤からダイアグラムを書きつつ、並行して設計を進めていました。
スケッチなどと同じノリでダイアグラムを書いてみるとモヤっとしていたアイデアがまとまり、設計を進めやすくなります。
視覚的・直感的にも理解できる
設計課題では最終的に具体的な形に落とし込むわけですから、視覚的に説明することが有効です。図式は言葉で説明するより一瞬で情報が頭に入ります。良いダイアグラムがあれば、長々しい説明をする必要はありません。
効果的に矢印や色彩などを活用することでより直感的に理解することができます。一つのシンプルな図式が数百字以上の説得力を持つことも珍しくありません。
内容が印象に残りやすい
文章や言葉は忘れやすいものですが、視覚情報であるダイアグラムは印象に残りやすいです。説明を受ける側がプレゼン序盤の内容を後半で忘れてしまう、なんてことは結構あります。ですがダイアグラムの印象が残っていると、通しでプレゼン内容の理解が進みます。
ダイアグラムは『道標』として、正しい理解へと導いてくれます。
ダイアグラムにはここまで説明したような大きなメリットがあります。
実際に、私は全設計課題でダイアグラムを作成してプレゼンボードに載せていました。
ダイアグラムの事例紹介
ダイアグラムで代表的な建築家といえば『OMA』でしょう。そして『OMA』から独立した『BIG』もダイアグラム使いの代表格です。おそらくダイアグラムを劇的に建築業界に広めたのは『OMA』だと思います。
さっそくダイアグラムの例を見てみましょう。
一目瞭然で建築の成り立ちがわかる素晴らしいダイアグラムです。
他の建築家のダイアグラムもいくつか見てみましょう。
同じダイアグラムといっても表している内容も表現手法も実に多様です。
ここで載せたものとは全く違った種類のダイアグラムも沢山あります。
ネットや雑誌でコンペや卒業設計の案を調べれば、ほとんどの人がダイアグラムをプレゼンボードに載せていますので、ぜひ色々と目を通してみてください。
ただ種類は色々とあれど紹介した以下の「3つの効果」を求めていることはだいたい共通していると思います。
○ 設計内容が整理できる
○ 視覚的・直感的にも理解できる
○ 内容が印象に残りやすい
それではどのようにダイアグラムを作成すれば良いのか、具体的な手順を見ていきましょう。
ダイアグラムの作成手順
図式化されていればダイアグラムと呼ぶことはできますが…、効果のないダイアグラムは作成しても意味がありません。
設計内容がまとまり、プレゼンに効果的なダイアグラムの作成方法を紹介していきます。
ダイアグラムとしてアウトプットする前に、まずは自分で自分の設計案を本質的に理解している必要があります。
「理解しているに決まってるじゃん」と思う人も、もう一度「特徴」や「要点」を見直してみましょう。
ダイアグラムは内容ごとに分けて複数個になっても構いません。敷地分析/プログラム概要/形態操作…などなど、説明項目をざっくりと分けるところから始めてみましょう。どのような項目に分けると説明がスムーズにいくかを考えながら、ダイアグラムがあったほうが伝わりやすい項目には各々のダイアグラムを用意するつもりでいましょう。
説明内容は基本的にシンプルにする方が伝わりやすいですが、シンプルにする過程で内容が削がれてしまっては本末転倒です。「つまり何が伝えたいのか?」と自問自答してみましょう。無理やり内容を削ると言うよりは、大切な部分を抽出するという感覚だと思います。感覚的にお伝えすることしかできませんが…、ここが正念場です。
なんとなくこんなもんかなというノリで十分ですのでダイアグラムをスケッチしてみましょう。
ここまでのステップで内容がちゃんとまとまっていれば、図式のイメージがしやすいと思います。
まずは説明内容を図式で包含できている必要がありますので、伝えたいことの漏れがないかチェックしましょう。必要に応じて情報を膨らませていきます。
図式化の中で時折説明内容の間違いを見つけたり、別のまとめ方の方が良いと思い付くことがあります。
これらのことをフィードバックして説明内容を更新しましょう。
ここまでの段階では情報を入れ込むことに注力しましたが、次は本当に必要な情報のみに絞る段階です。
再びSTEP3で行ったように「つまり何が伝えたいのか?」と、厳しく自問自答しましょう。
ベストな状態は説明の言葉が0でも意味が伝わることです。矢印や色分けなどをして分かりやすさをブラッシュアップしましょう。
STEP7まででダイアグラムとして問題のない状態にはなっていますが、最後の仕上げです。感覚的に頭にスッと入ってくる状態を目指してブラッシュアップしましょう。
これでダイアグラムは完成です!
ダイアグラム作成の際の注意点
最後に、ダイアグラム作成の際に意識しておくべきこと3つについてお話しします。
○ 「表現」が内容の邪魔にならないように
○ 見る人のストレスを極限まで0に近づけると飛躍的に評価が良くなる
○ ダイアグラムはあくまで道具、設計内容よりも優先させてはいけない
「表現」が内容の邪魔にならないように
ダイアグラムの作成に慣れてくると、徐々に表現に凝りたくなってくるでしょう。私もそうでした。
それ自体は悪いことではありませんが、このとき、ダイアグラムの本来の役割は忘れないようにしたいところです。
ダイアグラムは「視覚的・直感的に理解する」ためにつくるものです。
表現ばかりが目立ち、伝えたいことに意識が向かなくならないようにしましょう。
見る人のストレスを極限まで0に近づけると飛躍的に評価が良くなる
見る人のストレスをとことん減らすという意識を持つことはとても大切です。
まぎらわしい文言や特に意味のない塗り分けや矢印などはなくして、見る人が混乱してしまう要因を徹底的に排除しましょう。
また、極限まで分かりやすく、見る人が頑張らなくても、すんなりと理解できる状態にしましょう。
最悪の場合、見る側はストレスを感じると、設計案をしっかり見ようという気すら削いでしまう可能性があります。反対にストレスのないダイアグラムは、非常に好印象で評価にも良い影響を与えます。
ダイアグラムはあくまで道具、設計内容よりも優先させてはいけない
実際、設計は多岐に渡る物事を複合的に組み合わせながら考えて一つに集約しているので、シンプルなダイアグラムで完全に表せるというわけではありません。ダイアグラムは設計内容の『あらすじ』みたいなものだと考えると良いかも知れません。『あらすじ』に書かれていないことも当然たくさんあります。
ダイアグラムに合わせて設計を変えようとするときは、設計がより良くなるのであれば問題ありませんが、それで設計が悪くなってしまうのであれば思い留まりましょう。そのときはダイアグラムや説明の仕方の方を変えるべきです。
ダイアグラムに引っ張られて、設計内容が単純で窮屈なものになってしまわないように注意が必要です。
優れたダイアグラムはものすごくシンプルなのに本当に大切なことを伝えてくれます。
そんなダイアグラムを作成するためには、複雑な設計内容を本質的に、かつシンプルに表現する能力が求められます。実は簡単に作ったように見えるダイアグラムこそ、ものすごい苦労が隠れています。
それでは、皆さんのつくったダイアグラムが設計課題で活躍することを願っています。
また別の記事で。