■ 社会人になったら、どんな感じで設計するの?
■ 学生と社会人になってから、何か違うの?
■ 学生の間に準備できることは?
この記事をご覧の方は、将来的にも設計を続けていきたいと考えている方々だと思います。
社会に出てからバリバリ活躍しようと意気込んでいる人も、大丈夫かなあと不安な方もいると思います。
そんな方たちも、この記事を読めば社会に出てから戸惑うことが少なくなると思います。
事前に情報を知っておきたい方、不安を取り除きたい方は是非読んでみてください。
この記事には『皆さんの将来の姿』が描かれているかも知れません。
入社当時は、想像と現実のギャップの大きさに衝撃を受けました…。当記事はすべて経験にもとづいて書いています。
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「設計課題」と「社会に出てからの設計」の違い
大きな違いは以下の4つです。
■ クライアントがいる
■ コスト、スケジュールといった現実的な制約
■ 構造、設備などの外せない現実的な検討事項
■ 多人数で1つのプロジェクトが進行
ふーん。という感じかもしれませんが、この4つは設計を全く違ったものにするほど絶大な影響を与える重大な要素です。
なぜこの4つが重要な要素なのか?しっかりと説明していきます!
クライアントは建築の質を左右する最重要人物
クライアントがいるということは、「要望」があるということです。
学生の設計課題は、課題文があれども自分が思ったように好きに設計できます。
しかし、社会に出るとプロジェクトの目的はクライアントの要望を叶えることです。
お金を出すのはクライアントですので、クライアント要望は外せません。
「芸術家」と「建築家」が違うのはこの点ですね。建築家が本当に好き勝手できるのは自邸くらい。
クライアントの存在は、良くも悪くも建築の質を左右します。
クライアントと意気投合し、感性もピッタリあっていれば設計に集中できます。場合によっては、クライアントの一言がヒントになり設計内容を引き上げてくれる事もあります。
問題はクライアントの要望に賛同できない場合です。自分の考えとかけ離れているとき、悲しい思いをしながらも図面の線を引くことになります…。
作庭家の重森三玲が「クライアントの教育が一番難しい」といっていますが、そんな気持ちになることもたまにあります。
学生時代は「建築」は数学のように完璧なものだと思っていました。社会に出てからは「建築」は感情のある人間が作っているものなんだと認識が変わりました。
コスト・スケジュールといった現実的な制約、設計内容とは別次元の話
設計の質に直結するわけではありませんが、守らなければいけない制約があります。
コスト・スケジュール・法規が代表的なものでしょう。
きっと皆さんが想像している、百倍の量の制約が存在します。笑
設計者はこれらを把握し、全体を俯瞰しながらコントロールしていく能力が必要です。いわゆる「設計力」ではなく、「調整力(とでもいえばよいのか…)」が必要です。石上純也さんすら「設計は調整がほとんど」というようなことを雑誌で仰っていました。
設計者は設計以外にも気を回し、設計力以外の能力も必要とされます。
逆にこうした制約はうまく利用すれば面白いデザインのきっかけにもなります。
構造、設備などの現実的な検討事項、実現するには多くの壁
何造?架構形式は?空調は?電気は?給水は?
設計課題は「何をつくるか?」に比重があるのに対し、社会に出てからの設計は「どうつくるのか?」に大きく比重があります。
ほとんどの人が、実務経験がほとんどない状態で社会に出ると思います。はじめはその検討項目の多さ、そしてそれらが影響しあう複雑さに、手も足も出ないと思います。
それが理由で建築が嫌いになりそうな時期がありました。笑
こんなにも大変なのかと、頭の中は実務で飽和状態になります。でも、ある程度実務を理解し始めたときは、設計が楽しくて仕方ありません。
多人数で1つのプロジェクトが進行、先導するのが意匠設計者の役割
例えば「住宅」なら登場人物は、
- クライアント:2人(夫婦の場合)
- 意匠設計者:2~3人
- 構造設計者:1~2人
- 設備設計者:1~2人
- 工務店:2~3人
- 各施工者:7〜8人
合計:15~20人
といった人数の人が関わります。大規模プロジェクトになれば、関係者が50~100人になることもあります。
意匠設計者の大きな役割の一つは、この人々の「まとめ役」です。
年齢も役割もバラバラな多くの人々の間に立って、皆が向かうべき方向を示しながら、まとめていきます。たとえ、その場で最年少だって関係ありません。これは設計力というよりも「コミュニケーション力」や「人柄」自体が試されます。メンタル的に負担が大きく感じる人もいると思いますが、同時にやりがいも感じます。
学生のうちにやっておくべきことを1つだけ
「設計課題」と「社会に出てからの設計」の違いは以下のことだと説明しました。
■ クライアントがいる
■ コスト、スケジュールといった現実的な制約
■ 構造、設備などの外せない現実的な検討事項
■ 多人数で1つのプロジェクトが進行
一貫しているのは、設計課題における「何をつくるのか?」という抽象思考以外の占める割合が大きいことです。
それでは学生のうちにやっていることは無意味なのかというと、全くそんなことはありません。
設計課題で行っている「何をつくるのか?」という抽象思考は、社会に出てからの設計でも最重要です。最重要なんだけれども、頭がそのことまで回らない・時間が割けないという状況に陥りがちなのです。
だからこそ、最後に1つだけ学生のうちにやっておくべきことをお伝えしようと思います。
それは、
「自分なりに建築を深掘りし、自分の信じる建築観をつくっておくこと」
です。
ここまで書いたように、学生からしたら想像できるような、できないような、未知なことで溢れています。設計課題における抽象思考以外の部分で頭の容量が使い切られてしまいます。だからこそ、学生のうちに自分の信じる建築観を形成しておいた方が絶対に良いはずです。頭の中で抽象的な思考を十分にできる時間があるのは、もしかしたらいまが最後かもしれませんよ。