■「エスキス」ってどんな意味?
■ 設計課題のエスキスは何をすれば良いの?
■ 設計課題で絶対に失敗したくない!
■ エスキスで良い案を思い付きたい!
設計課題で良い結果を残すためには「エスキス」が最重要だよ
「エスキス」って言葉は良く使うんだけど、正直なにをすれば良いのか分からないんだよね。
エスキスの手順って、案外丁寧に教えてくれる先生は少ないんだ。
私も、自分なりに設計課題で経験を重ねながらエスキスの進め方を模索しています。もし良い進め方があるのであれば知りたいです!
当記事では、6年間設計課題に本気で取り組み、学年1位になった私がエスキスの進め方やコツを徹底的に解説します!
この記事を読めば周りの建築学生よりも確実に設計課題を円滑に進めることができます。設計課題での大きな失敗も少なくなり、評価が上がるはずです。
この記事を読んで同級生に差を付けてしまおう!!
これまでの記事やinstagramの設計力を上げる方法の総まとめ記事です。体系的に学べます。
コンセプトメイキングに関する情報の完全版です!これさえ読めば問題ありません。
1000冊以上読んだ私がつくりました。ここから選べば間違いありません。
課題中盤~後半に活用すれば評価アップ間違いなし。
最初に:「エスキス」と何か?
「エスキス」とはざっくり言ってしまえば、「思考行為」全般のことを指します。大元を辿ると「下絵」とか「スケッチ」という意味だったそうです。
もう少し踏み込んでみると、「エスキス」は2つの意味で使われます。
- アイディアをまとめるために、ラフなスケッチや模型などをつくること。
- 設計課題提出に向けての、事前の講師との相談会のこと。
①は自分が行う思考行為のことを指し、
②は講師や先輩、友達などの誰かと行う思考行為のことを指します。
なるほど。設計の「エスキス」には2つの意味があるんだね。
そうそう。いずれにしても「思考行為」全般のことを「エスキス」と呼んでいるよ。
エスキスの意味について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
➡︎ 設計課題の「エスキス」とは何か?
当記事では、「①自分で行うエスキス」と「②講師などと一緒に行うエスキス」のそれぞれの進め方やコツを解説していきます。
①自分で行うエスキスの主な進め方
まずは、自分で行う「エスキス」の進め方を説明します。
長年掛けて辿り着いたおすすめの方法を紹介!
「エスキス」の方法は必ずこうしなきゃいけない!というものではないから、慣れてきたら自分なりの進め方にアレンジできると良いね。
わかった!まずは教わった通りに実践してみるよ。
STEP1:敷地調査と事例収集
「敷地調査」は実際に訪れて行う
1度は、少なくとも実際の敷地を見にいきましょう!その後のイメージのしやすさが段違いです。
そして、敷地の特徴を把握しましょう。
- 敷地の方角・大きさ・形
- 周りにはどんな建物や自然があるのか?
- どんな人たちが居て、どんな使われ方をしているのか?
- その敷地にはどのようにたどり着くのか?
などといったポイントを、注意深く分析していきます。
なにを見たらいいのか分からなかったから、見るべき項目がはっきりとしていると助かるね!
敷地調査と、その後の敷地分析は設計で良いスタートを切るための大切なフェーズだから手を抜かずに頑張ろう。
以下の記事でさらに詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
➡︎ 設計課題に活きる敷地調査と分析方法【ポイントまとめ】
「事例収集」は雑誌で行う
事例収集は主に雑誌で行います。
実際の建物を見学することもありますが、何個もの建物を見学するのは現実的ではないので、雑誌での情報収集がメインになります。
例えば「小学校」課題であれば、新建築を5〜10年分目を通して、小学校事例を集めましょう!
ネットでかっこいいデザインを検索したりはするんだけど、雑誌が良いの?
PinterestやInstagramで検索するのはときには有効なんだけど…、雑誌には複数枚の写真+図面+建築家の言葉が基本セットで載っているからリサーチには断然有効なんだ。
なるほど〜!おすすめの雑誌はある?
事例収集なら、基本的に物件数が多い『新建築(住宅なら住宅特集)』が良いよ。例えば小学校の課題であれば、新建築を5〜10年分目を通して、小学校事例を集めよう。
結構たくさん集めいないといけないんだね〜
建築雑誌は設計者の必読書です。雑誌の効果的な読み方は以下の記事をご覧ください。
➡︎ おすすめの建築雑誌と読み方を解説
STEP2:STEP1から重要な「言葉」を自分なりに書き出し
敷地調査と事例収集をおこなったら、
「大切だと思ったこと」
「ポイントになりそうなこと」
「頭に浮かんだアイディア」
を「言葉」で書き出していきましょう!
単語の羅列でも、文章でも、それが混ざっていても全く問題ありません。
「東側は眺望が良好」
「隣の建物と距離が結構近い」
「丘っぽくすると敷地に馴染むかも…」
「雰囲気の良い街っぽく」
「コミュニケーションの誘発が重要」
などなど、始めはいろんなレベルの話がごちゃごちゃで全然大丈夫です。
とにかく頭に浮かんだことを全て書きます。
▽かなりお恥ずかしいですが、昔のエスキス帳を引っ張り出してみました。おそらく4年生くらいのものだと思います。
字が汚いですが気にしないでください。笑
思ったことをどんどん書けば良いんだね。このごちゃごちゃしたエスキス帳を見たら、なんだか自分にもできる気がしてきた!
……。
決して、いきなり「言葉」をまとめようとせずに、全てを書き出すつもりで行いましょう。段階を経て、徐々に整理していきます。
そして先のフェーズで、この書き出した「言葉」の中から、やがてコンセプトが生まれます。
STEP3:具体的に「形」にする
言葉をたくさん書き出したら、ぼやっとですが「形」のイメージがいくつか湧いてきました。
良い調子だね!そうしたらラフなスケッチや模型でどんどん具現化していこう。考えすぎず、直感的で大丈夫だよ。
もし「形」が全然思い浮かばなかったらどうしたら良いの?
その場合でも、とりあえず当てずっぽうで「形」をつくってみよう!具体的な形があれば、それを見ながら良いところや悪いところが見えてきて、前進することができるよ!
始めから、しっくりくる「形」が生まれることはほとんどありません。
一発で思ったことを形にできるのはほんの一部の天才だけですので、何度も何度も試みましょう。
▽こちらもお恥ずかしいのですが…、昔のエスキス帳を載っけます。
書き方は自由ですので、あくまでも一例としてご覧ください。
「形」は主に以下の項目などに考えるのがお勧めです。
- 配置:建物を敷地のどこに建てるか?
- ゾーニング:機能のゾーン分け
- 動線:敷地外との行き来、敷地内動線
- 開口部:眺望や採光、空間の連続性
- 各所の詳細:素材選定や寸法調整など
STEP4:STEP2と3をひたすら行ったり来たり
STEP2で書き出した「言葉」と、STEP3でスケッチ or 模型化した「形」が一致するまで行ったり来たりする段階です。
イメージを図式化してみましたのでご覧ください。
左が課題スタート時、右が最終提出という時間経過を示しています。
波線が言葉と形の差で、課題後半にいくにつれて言葉と形が一致していくというのをイメージしているよ。
最初の頃は言葉と形をそれぞれで考えて、往復することですり寄せていくって感じかな?
その通り!往復回数を増やすほどに一致度は高まるよ。
たしかに言葉で考えて案が進むときと、模型とかで形を考えながら発見することの、両方があるよね。それを並行してやろうってことか!
よく理解しているね!いわゆる理性(言葉)と感性(形)を、高次元で統合するのが、まさしく『建築』であるといえるんだ。
おお〜!すごく本質的な感じがする!
- 「言葉」を図式化・形式化 ▶︎「形」をブラッシュアップ
- 「形」から発見したことを取り入れる ▶︎「言葉」をブラッシュアップ
言葉や形が収束していくと、その中から自然とコンセプトにつながる内容が出てくると思います。
コンセプトは設計課題の核となる部分です。コンセプト立案や具体的にどんなテーマがコンセプトになり得るのか以下の記事で紹介していますので、よければご覧ください。
➡︎ 建築のコンセプトの考え方と事例紹介【設計課題の評価を上げる方法】
STEP5:「言葉」と「形」が一致したら完成
「言葉」と「形」が合致したら、設計案は完成だよ!お疲れ様!
ふう、なんとかできたよ。でも、本当にこれで大丈夫かなって思うときがよくあるんだ。
そうしたときは、信頼できる友人や先輩に客観的な意見をもらうことも良いと思うよ!それが難しかったら、下のチェックリスト100項目をぜひ活用してみてね!
うん!使ってみる!
また自己チェックができるようになることも非常に大切です。客観的な視点をなるべく持って自分の設計案を評価しましょう。
…とはいえ、いきなり客観的な視点を持って自己チェックをすることは難しいのでチェックリストを作成しました。設計課題のときの強力なお供として活用してください。
設計が目標に向かって、一本の道筋を辿る。
…なんてことは、ありません。
少なくとも私はありませんでした。
目標やコンセプト自体は設計しながら変わることもありますし、進んでからでないと見えないものが沢山あります。
ときに振り出しに戻ったり、急に案が飛躍的に良くなったり、それはコントロールし切れるものではありません。
そんなジェットコースターみたいな設計課題を楽しみましょう!
講師とのエスキスのポイントを解説
講師とのエスキスから多くの学びを得ることができるかどうかは、生徒の姿勢によって大きく左右されます。
同じ講師とのエスキスでも、ある生徒は案が飛躍的に良くなり、別の生徒は五里霧中状態…。
それでは、どうすれば上手くいくのか?
ポイントは以下の通りです。
■ 検討したものは恥ずかしがらずに全て持っていく
■ 言葉だけではなく形にして持っていく
■ エスキスにはなるべく出席する
■ あくまで設計するのは学生自身なので、講師に対して受け身の姿勢にならない
■ プレゼンの予行演習の場だと思って臨む
■ 講師の発言を正確に読み取る
検討したものは恥ずかしがらずに全て持っていく
ちょっと持っていくのが恥ずかしいことがあるんだよね。
いきなり良い案を出せる人はいないから、気にせず持っていくと良いよ!その方が講師もコメントがしやすくいし、学べることが多くなるよ。
エスキスでは講師からいかに「多くの情報」を得られるかが重要です!
そのために、検討したスケッチや模型を全て持っていき、机に広げて講師に見せましょう。
言葉だけではなく形にして持っていく
模型やスケッチが一切なく、言葉だけでエスキスに臨む学生がたまにいるけど、それは絶対にやめた方が良いよ。
そもそもどう考えたら良いか分からなくて、形にたどり着けないことがあるんだよね…。
気持ちは分かる!その悩ましい状況も伝えつつ、やっぱり漠然としたイメージだけでも持っていった方が良いと思うよ。
そうなのかあ。具体的な形にするってのが難しいんだよなあ。
言葉だけだったら、いくらでも夢のような計画が語れるんだけど、建築の醍醐味はその先で、具体的な「形」にするという部分なんだ。それが一番難しくも面白い部分だよ。
具体的なスケッチなり模型がなければ、講師もコメントに困ってしまいます。
言葉だけでなく、しっかりと物を見せることで、有益なエスキスになります。
エスキスにはなるべく出席する
検討が思うように進まず、エスキスに出席して講師に見せるのが恥ずかしい…。もしかしたら怒られるかも…。
と思って欠席する人が結構いますが、それでは前回エスキスからの期間を無駄にしてしまいます。中途半端な状態でも、自分の中で納得できていなくとも、何かしら講師に見せて意見をもらうというのが大切です!
頑張って課題に取り組む姿勢があれば、講師もそれに答えてくれます。
毎週のようにドキドキしると思うけど、勇敢にエスキスに挑んでみよう!険しい道のりを乗り越えれば、最終的には良い案に到達する可能性が高まるよ。
あくまで設計するのは学生自身なので、講師に対して受け身の姿勢にならない
講師の言うことに身を委ねているだけでは、良い結果は得られません。
あくまでも、設計案を進めるのは学生自身です。
講師はそのアドバイス係であり、設計案を生み出してくれる人ではありませんので、
誤解しないように注意しましょう。
プレゼンの予行演習の場だと思って臨む
最終的な課題提出時に行うプレゼンの予行演習の場としても活用できます。
ある程度案の方針が決まってきたら、試しに講師にプレゼンするつもりで持っていき反応を見てみましょう!
あくまでも、最終提出ではないので体裁は気にする必要はありません。
別に綺麗に着彩したり、パースの完成度に時間を使う必要はありません。
どんな質問をされるのか?どんな印象を抱くのか?最終提出前に知ることができれば改善することができます。
講師の発言を正確に読み取る
講師は、学生の10倍・20倍と建築に関わっているので、学生側がその発言意図全てを汲み取れていない可能性が高いです。
講師の発言を正確に読み取るには、「それはつまり、〇〇ということですか?」と自分の言葉で聞き返すことが有効です。
分かったつもりのままではなくて、必ず確認のためにしっかりと聞き返しましょう。
違っていたら、もっと噛み砕いて説明してもらいましょう。
最後に:まだイメージが掴めないという方へおすすめの本を紹介
「エスキス」は実践してみないと理解しづらい部分があると思いますので、最後にそんな方へお薦めの建築本シリーズを2つ紹介します!
「現代建築家コンセプト・シリーズ」
建築家が頭の中でどんなことを考えながら設計しているかが書かれているシリーズだよ。建築家毎に本が分かれていて、短めに書かれているシリーズです。
図版も多くて、とても読みやすい本ですよね!私もこのシリーズは10冊くらい読みました。
そんなに!自分も読まないと…!
設計に臨む姿勢を学んで、初めのうちはちょっとだけ真似してみるのもお勧めだよ!
「PLOT シリーズ」
こちらも建築家が頭の中でどんなことを考えながら設計しているかが書かれているシリーズなんだけど、より具体的に細かく書かれているよ。
設計課題だけでなく、将来実務に着いたときにも参考になりそうだと思いました。
そうだね!リアルに経緯を書いてくれているから、読まない手はないよ。
ではでは。