この記事は次の方向けです。
◯ 意匠系の就活生
◯ 来年以降に就活予定の建築学生
◯ 就活するか未定だけど、一応業界を知っておきたい!
組織設計に6年間勤務後、独立した自分の経験 + 業界仲間からの情報を含めて書いています。
意匠建築学生の進む進路は建築業界内外で多岐に渡りますが、「設計者・デザイナー」として就職するのであれば、主に以下の職種のいずれかとなります。
- 組織設計事務所
- ゼネコン(設計部)
- アトリエ
- ハウスメーカー
- インテリアデザイン
その他ももちろんありますが、今回はこの5つに絞らせてもらいます。
そして特に
- 組織設計事務所
- ゼネコン(設計部)
- アトリエ
上記3つの違いが曖昧だという人が多いと思いますので、その違いも重点的に解説したいと思います!
同じ「意匠設計」といえど、どの選択肢を選ぶかで全然やることが違いますので、就職先として考えている方は注意深くご覧ください!
実際に社会で設計経験がある人にしか書けない内容を忖度なく書いているよ。
進路に迷っているので、ぜひ知りたいです!
組織設計事務所に特化した記事はこちらです。他に類を見ないくらい徹底的に組織設計事務所について解説しています。
これまでの記事やinstagramの設計力を上げる方法の総まとめ記事です。体系的に学べます。
1000冊以上読んだ私がつくりました。ここから選べば間違いありません。
課題中盤~後半に活用すれば評価アップ間違いなし。
意匠系建築学生が進む、主な就職先はこちら
組織設計事務所
簡単にいうと規模の大きな設計事務所のこと。
対して、規模の小さな事務所はアトリエ事務所と言われますよね。
「組織設計事務所」と「アトリエ事務所」は全然別物なので後述するよ。
組織設計事務所について説明すると、その規模ゆえ、事務所内に構造設計部・設備設計部・都市計画部などの専門部門が存在します。
各専門部門間の連携が取り易く、事務所内で完結して一つの建物を設計できることが強みです。
バランスよく総合力で勝負するのが組織設計事務所だね。事務所として多くの物件数を毎年のように設計してから、ノウハウの蓄積量も強みの一つだよ。
手掛ける物件は超高層ビルや商業施設など多岐に渡りますが、ほとんどが大規模物件のイメージです。
そうだね!住宅が設計したい人なんかは組織設計事務所を避けた方が良いよ。
大規模物件が多く、かつ組織内の設計者人数が多いことから、技術力があり穴のない総合点の高い設計が可能ですが、その反面、個性に乏しい物件が多いように思います。
日本の代表的な組織設計事務所は以下の通りです。
- 日建設計
- 日本設計
- 久米設計
- 三菱地所設計
- NTTファシリティーズ
- 山下設計
- 松田平田設計
- アール・アイ・エー
- 梓設計
- 安井建築設計事務所
- 石本建築事務所
- JR東日本建築設計
- 大建設計
- 類設計事務所
- プランテック総合計画事務所
ゼネコン(設計部)
ゼネコンとは、「ゼネラルコントラクター」の略で、総合建設業者のことだよ。意匠系建築学生が主に就職するのは、その設計部になるよ。
組織設計事務所とゼネコン設計部の違いはなんですか?
組織設計事務所が「設計専業」なのに対して、ゼネコンは施工がメインという違いがあるよ。
設計部だけで見ても、組織設計事務所くらい規模が大きいのが特徴だ。
会社単位で見ると、ゼネコンは組織設計事務所の何倍もの規模だね。
なるほど。大企業に就職したいっていう願望がある人には良さそうですね!
その中でも、以下のトップ5をスーパーゼネコン(略称:スーゼネ)と呼び、非常に競争率の高い就職先となっています。
CMなどで見たことがある人も多いと思います。
▼名前をクリックするとその会社のホームページに飛べます。
建築学生が知っておくべき内容の一つとしては「竹中工務店」のみが非上場ということです。
急に難しい話になったかと思われるかもしれませんが、ものすごく簡単にいうと以下の通りです。
- 上場している企業(竹中以外のスーゼネ):
株主に配慮が必要なため、経営の自由度が低くなる。 - 非上場の企業(竹中工務店):
株主への配慮が不要なため、チャレンジがしやすい。
そのため竹中工務店はスーパーゼネコンの中で比較すると面白い設計ができる!ということで就活先として人気があります。
あくまでもゼネコン内で比較するとってことだけどね。
組織設計事務所と同様に、技術力があり穴のない総合点の高い設計が可能ですが、その反面、個性に乏しい物件が多いように思います。
アトリエ
規模が小さく、トップの建築家の個性が色濃く出ている設計事務所のこと。個人名を掲げてた事務所名になっていることが多いよ。
名の売れている建築家はみんなアトリエですよね。
規模の大小は目安に過ぎず、非常に限られているが組織設計並みの設計者を抱えているケースもあリます。
そうした事務所はもはや組織設計と変わりません。
例外はありますが、基本的に事務所内には意匠設計者のみで、設計をする際は構造事務所・設備事務所などと共同する形になります。
組織設計事務所が「総合力・技術力」で勝負するのに対して、アトリエ事務所は「個性・デザイン力」で勝負するイメージです。
その通り!「建築」の探究にとことん浸かりたいなら、正直アトリエ一択だよ。
なるほど。それを聞いて気持ちが傾いてきました。
※「技術的な探究」ということであれば、組織設計やゼネコン設計部に進む方がメリットが多いように思います。
あげ出したらキリがありませんが…、代表的な方の事務所をいくつか以下にあげます。
- 伊東豊雄建築設計事務所
- 隈研吾建築都市設計事務所(もはや組織規模)
- 磯崎新アトリエ
- 安藤忠雄建築研究所
- AS
- 藤本壮介建築設計事務所
ハウスメーカー
注文住宅の大量生産をおこなっている会社のことです。
設計も施工も行なっています。
自由な設計をしたいなら別の業種の方が…
効率的に大量生産を実現するため、自前でプレハブ化・一部の部品の規格化を行なっています。
スピード・効率・一定の品質が担保されているということで、世には多くの住宅メーカーの商品が建てられています。
また物件数が多く、住宅の生産に関するノウハウの蓄積量は、アトリエ事務所とは比較にならないでしょう。
しかし
設計者としては、自由度が少ないという欠点があります。
規格化されている部分が多く、0→1で新しい建築を生み出すという感じは薄いかもしれません。
代表的なハウスメーカーは以下の通りです。
インテリアデザイン
商業空間や、パブリック空間などの企画・デザイン・施工を手掛ける会社だよ。
建物の骨組みではなく、実際に目に触れる内装デザインです。
一定数の意匠建築学生の就職先になっています。
建物の設計に比べて、インテリアデザインは目まぐるしい程のスピード感があります。
考えたものが早期に出来上がる楽しさと、その反面、「じっくりと考え込みたい」というタイプの人にはその時間がなく辛さもあるかと思います。
短期間で成果が見えるのが良さですね。
スピード感に付いていくのが辛いって人もいるよ。合う合わないが結構ハッキリする業種かもね。
代表的なインテリアデザイン会社は以下の通りです。
アトリエ/組織設計/ゼネコン の違いは何か?
各職種の説明は行ってきましたが、
下記3つの違いが曖昧だという建築学生が多いと思いますので、その違いの解説を追加で行います!
- 組織設計事務所
- ゼネコン(設計部)
- アトリエ
同じ「意匠設計」でも、どの選択肢を選ぶかで全然やることが違うよ!就職先として考えている方は注意深く読んでね。
はい!
アトリエ事務所と組織設計事務所(ゼネコン設計部)の違い
3者をものすごくざっくりと分けると、
「アトリエ事務所」と「組織設計事務所・ゼネコン設計部」の2つに分けることができ、両者は全然違います。
アトリエ | 組織設計(ゼネコン設計部) |
・クライアントは個人が多い ・主に小規模物件 ・1project が短期間で終わることが多い ・プロジェクト全体を見る必要がある ・トップの建築家の色が濃く出る ・勤務時間が長い事務所が多い ・給料は低い事務所が多い ・仕事量に波がある | ・クライアントは企業が多い ・主に大規模物件 ・1project に長期間掛かることが多い ・プロジェクト内で役割分担がはっきりしている ・決まった設計の特徴はない ・勤務時間の管理がされている ・給料が高い事務所が多い ・安定して仕事が多い |
学生の方にはちょっとピンとこないかもしれませんが、一つ目にあげた「クライアントの違い」が最重要ポイントだと思っています。
「クライアント」がその他の項目の要因にも大きく関わってくるよ。
「クライアント」ですか。設計課題では登場しなくて、深く考えたことはありませんでしたが、実は大切なポイントなんですね。
アトリエ事務所について深掘り
クライアントが個人ということで、住宅などの小規模物件がメインになります。
小規模物件なので、設計期間及び工事期間が短く、1〜2年で完成することが多いです。
そして小規模物件ということは、一人の設計者が全体を隅々まで見ることができます。
いち早く全般的な実務経験を得たいということでしたらアトリエが良いでしょう。
クライアントが個人だと、使う人の顔が見えやすいというのも特徴です。
例えば住宅ならば、目の前にいるクライアントの生活を良くしたいというモチベーションが湧きやすいと思います。
トップ建築の意向によって作風やプロジェクトの進め方は様々です。
組織設計事務所(ゼネコン設計部)について深掘り
クライアントは企業がほとんどで、オフィスや商業施設、病院、工場など多岐に渡ります。
大規模物件なので、設計期間及び工事期間が長く、完成までに5~10年掛かるものもざらにあります。
大規模物件なので、全てを見ることはできず、「外装担当」「プランニング担当」など役割分担がされます。
そのため、全般的な実務経験を得るまでにはかなり時間が掛かります。
クライアントが会社だと、(ほとんど場合)使う人はクライアントとは異なるため、顔が見えにくいということがあります。
クライアントの要望と、使う人の要望は一致するわけではありませんので、設計の際は注意が必要です。
アトリエが個性ある設計をするのに対し、組織設計は例えるならば「幕内弁当的な設計」です。
バアランス良く、いつ食べてもある程度美味しい設計です。
クライアントからもそうした設計を望まれることがほとんどです。個性的なデザインを求められることはあまり無いと思います。
組織設計事務所とゼネコン設計部の違い
次は「組織設計事務所」と「ゼネコン設計部」の違いを解説するよ。
どこが違うのか、あまりピンとこないんですよね。
クライアントが企業・大規模物件が多い、という共通点も多いんだけど、以下の2点に着目すると違いがわかるよ。
ゼネコンの収益源は「施工」
組織設計事務所はその名の通り「設計」がメインなので、設計者が主役であり、そのためだけに会社が動いています。
対してゼネコンは「施工」がメインなので、「設計部」の意向だけで会社が動くわけではありません。
設計施工一貫の場合、施工部の立場の方が強いということも多いと思います。
ゼネコンは施工がメインの会社!
ゼネコンは公共建築の設計ができない
少しだけ難しい話になりますが、、
公共的な建築は競争入札が原則とされています。
つまり、指名で「〇〇建設にお願いする!」ということができないのです。
そして、設計をいずれかのゼネコン設計部がしてしまうと、そのゼネコンが入札に有利になってしまいます。
それでは公平性に欠けるため、ゼネコン設計部は公共建築の設計を基本的に行わないのです。
公共建築を設計したいなら組織設計事務所を選択!
建築学生が準備しておくべき就職対策を1つだけ紹介
意匠系の建築学生に向けた就活対策をあえて「1つ」にしぼって紹介するよ。
いったいなんでしょう…?
この1つが就職採用に最も影響があることだよ。
それは…
「設計課題とコンペを頑張っておくこと」
就活までに、もう課題やコンペがない人は、これまでの作品のブラッシュアップに全力を注いでください。
意匠系の就活における評価は、「課題やコンペ作品が優れているか」というのが95%くらいを占めてます。
今回紹介した進路の就活は真っ向から作品で勝負できる人が一番強いってのが現実だよ。
就活というと、面接で機転の効いたことが返せるかとか、グループディスカッションでの人柄を見られるのかと思っていました。
まったくないとは言わないけど、(設計事務所・設計部にいくのであれば)ポートフォリオや作品シートの内容の方が何十倍も大切だね。
- 自己PRが上手くできるか
- コミュニケーション力はあるか
- モチベーションが高いか
- グループディスカッションで率先して意見を述べられているか
- 質問への機転の効いた返答ができているか
- エントリーシートがしっかりと書けているか
などといったことが大切、という印象を持っている人がいるかもしれませんが、
意匠系の就活においてはよっぽどヒドくなければ良いという感じがします。
文系の方の就活とは異なります。
以下の記事を参考に、早いうちから本気で取り組んでおくことをお勧めします!
⇒【建築学生が学ぶべきこと】設計力が上がる勉強方法を現役設計者が解説
⇒【超根幹】設計課題は3つの評価軸から成っている|建築学生向け
面接などの就職活動の場だけ頑張って取り繕っても、効果は薄いと思います。
その場に行くまでの準備(設計課題とコンペの内容)が大切です。
最後に:就活のときに意識してもらいたいと思っていること
ここまで意匠系建築学生の就職先について解説してきましたが、最後に個人的にお伝えしたいことがあります。
就職することは、建築のプロになるということです。
初めのうちは卵かもしれませんが、業界外の人からしたら専門的な技能を持ったプロです。
一般的な人にはできないような特殊技能を手にするわけです。
就活する上で一点だけ意識してもらいたいなと思っているのは、
「あなたの専門的な力を何のために使うのか?」
ということ。
ちょっと大げさにいうと、
「社会のどこに加担するのか?」
ということです。
皆さんの志望動機は様々だと思いますが、
就職先の会社が
「社会のためになっているか?」
「誰かのためになっているのか?」
ということも意識してもらえると良いなと思っています。
ではでは。