■ 建築家を目指して頑張りたいのだけど…
■ 設計力がなかなかつかなくて…
■ 建築の勉強って何をすればいいんだろう
建築家を目指すためには、
授業以外にも「自分」で建築を学ぶ必要があります。
そしてコツコツと学びつづければ、
生まれ持ったセンスがなくても、学年トップレベルの実力は誰にでも身に付けることができます。
これは私の経験談でもあります。
私は入学したとき「建築」について知っていることは何もありませんでした。「デザイン」や「芸術」を意識したこともありません。親が建築家、なんてこともありません。
文字通り「0」からのスタートです。同級生の中にはすでに建築に詳しい人や、親が建築家という人もいたので、入学早々から焦りを感じていました。
それでも、嘆いたところで状況は良くなりませんから、頑張るしかないと覚悟を決め、たくさん試行錯誤しながら建築にのめり込んでいきました。
その結果、
9割以上の設計課題で優秀賞(全体講評進出)となり、通算成績では学内1位という結果を得ることができました。卒業設計やコンペの受賞歴もあります。
そこで今回の記事では、その方法を丸ごと紹介していこうと思います。
⬇︎この記事を含めて、これまでの記事やinstagramの情報をまとめた総集編もあります。
コンセプトメイキングに関する情報をまとめました。これさえ読めば問題ありません。
1000冊以上読んだ私がつくりました。ここから選べば間違いありません。
課題中盤~後半に活用すれば評価アップ間違いなし。
【揺るぎない事実】読書が最重要
「建築家になるには読書しなければならない」といったことを入学当時に歴史系の教授から言われ、そういうものかと素直に6年間(学部・大学院)読書を続けることにしました。
大げさではなく、自分の成長の大半は「読書」によるものだと言えます。
学年でトップの成績が残せたのも、最大手の設計事務所に入れたのも、読書がなければ絶対に無理だったと断言できます。
アイディア力、思考力、分析力やプレゼン力…、あげればキリがありませんが、これらは全て読書で学ぶことができます。
逆に読書をしないでそれらを効果的に学ぶことはとても難しいと思います。
素直に言われた通り実践することで、在学中に周りから変わったと言われるようになりました。
どのように読書をしていけば良いのか、紹介していきます。
自分で読書のノルマをつくって習慣化
読書習慣のない方は、まずは自分でノルマを作りましょう。
私が学生の頃を例にすると、10冊/月のペースをノルマに設定していました。
慣れるまでは3冊/月くらいでも良いです。いきなり高難易度の本に手を出さず、自分にとって少しだけ難しいけど頑張れば読める程度の本を読むようにしましょう。
このペースを続ければ、年間100冊以上読むことができます。
実際に私は、6年間の在学中に700〜800冊くらいは読みました。
読書はそれなりに時間が掛かるものですから、短期間で何十冊分もの内容を詰め込もうと思っても、不可能です。
だからこそ習慣化して継続する必要があります。
残念ながら近道はありませんが、続ければ確実に効果があるのが読書です。
「何の本から読めば良いの?」と思われるかもしれませんが、基本的に最初の10~20冊は何の本でも良いと思います。
結局在学中に数百冊読むので、肩慣らしのつもりで、気になった本から、まずは手にとってみましょう。
建築の本を中心に、ビジネス書や小説、自己啓発など、他ジャンルに手を伸ばすのも大いにありだと思います。
質の高い建築本だけを読みたいという人は私が作成した建築本100冊リストからお選びいただければ間違いありません。
➡︎ 建築本100冊リスト
在学中に「数百冊読んだ人」と「読んでいない人」、その差が歴然なのは言うまでもないでしょう。
読書すれば確実に成長できるのに、多くの人が実践していません。
あえて挑発的なことを言うと…、きっとこの記事を読んだ95%の人は読書をしていないと思います。だからこそ、残りの5%の人は絶対に学年上位になれるんです。
知識というよりは思考法を学ぶべき
本に載っている年数や地名を正確に覚える必要はありません。
なんとな〜く、時系列がわかる程度で良いと思います。私もそんなに覚えていません。
研究者には正確な知識が必要ですが、設計者には厳密な知識は必要ありません。
大切なのは、知識の暗記ではなく、思考の理解です。
知識があることと、理解しているということは全然違います。大切なのは知識よりも理解です。
表面的な内容だけ覚えても、背景にある思想や思考を読み解こうとしないのでは意味がありません。
いくら多くの建物の情報(規模・用途・機能など)を知っていようとも、そこまで設計力が上がるわけではありません。
建築家を目指す建築学生が知るべきは、
■ 設計意図
■ 建築家の思想(モダニズム、デコンストラクションなど)
■ 時代背景(産業革命、バブル、IT革命など)
一見表には現れていない裏側の部分です。
知識を丸暗記しても、応用が効きません。
しかし思考法を学べば、姿形を変え自分のものとして応用することができます。
思考があってはじめて知識が活きます。
何人もの思考法が自分の中にインプットされていれば、物事を多角的に考えることもできます。
それらの思考法がブレンドされて、段々と自分なりの思考法が形成されていきます。
同じ一冊の本を読んでも、そこから得られるものは人それぞれです。
本の内容を否定しない
本に書いてある内容は「一旦」受け入れるつもりで読みましょう。
これが苦手な人は結構います。本の内容を否定的に受け止めてしまうと何も得られず、読む意味がなくなってしまいます。
よくあるのが、賛同できる部分だけ覚えていて、無意識に自分の意見と異なるところは読み飛ばしてしまうことです。
しかし現実は「建築を学び始めたてのあなた」よりも「本に書いてあること」の方が、多くの場合正しいのです。
もし自分の意見と反対のことが書かれていても、内容を即座に否定せずに
「本が伝えようとしている意図を正確に読み解けているか?」
「自分の考えは思い込みではないか?」
一度、立ち止まって考え直してください。
自分と違う考えを受け入れることは難しいことですが、
そうしたときこそ、劇的に成長するチャンスです。
自分の意見を持つことは素晴らしいことですが、固執するのは成長の妨げになります。
現代の建築界に明確な正解はなく、建築家ごとに様々な考え方を持っています。
そんなふうに多様な価値観がバラバラに存在している状況ですから、価値観の間口をなるべく広げておくようにしましょう。
建築雑誌は情報の宝庫
世の中には建築の本がたくさんありますが、図面や写真を見たいときに結局行き着くのは建築雑誌です。
雑誌は必須アイテムです!浴びるように読みましょう。
自分がチェックしていた雑誌は6つです。簡単に特徴を書きました。
- GA JAPAN (厳選した建築のみを掲載。写真が良い。最近は文章が多めで思想まで深く学べる。最重要雑誌。)
- GA DOCUMENT (GA JAPANの海外版。厳選した作品のみ掲載。GA JAPANに比べ文章は少ない。)
- 新建築 (網羅的に作品が掲載。データベース的な役割。一気に情報をかき集めたい時に活躍。)
- 新建築住宅特集 (住宅のみ掲載。小さな建物だからこそ様々な試みがあり、学ぶことが多い。)
- a+u (国や建築家などの括りで特集が組まれている。必要に応じた特集をチェックすれば良い。)
- EL Croquis (スペインの建築雑誌。世界のトップアーキテクトのみが特集される。写真がダントツに良い。)
雑誌は学校の図書館に揃っていると思うので、チェックしてみましょう。
「これは!」という号は買って手元に置きましょう。
雑誌の利用方法は、「GA JAPAN」「GA DOCUMENT」「EL Croquis」は主に日頃の学習用、「新建築」「住宅特集」「a+u」は主に課題出題後の情報収集用、といった使い分けが良いと思います。
例えば「小学校」の設計課題が出題されたら、「新建築」を5〜10年分遡り、全ての小学校事例に目を通して分析しましょう。
これで小学校を設計する際の「キーワード」が大体分かるはずです。
その「キーワード」を中心に据えつつ、日頃「GA JAPAN」などから学んでいたことをアウトプットするイメージです。
建築雑誌を有効に活用すれば設計力も上がりますし、建築の理解が格段に上がります。よりその効果を高める読み方は以下の記事をご覧ください。
➡︎ おすすめの建築雑誌と読み方を紹介
建築見学は大切だけど注意点あり
読書に次いで大切なのが、実際の建築見学です。建築は誌面だけでは表現しきれない3次元の「空間」です。
建築で最も大切だと言ってもよい「空間」は、
■ スケール
■ プロポーション
■ 寸法
■ 素材の質感
■ 構造体の緊張感
■ 環境要素(光や風など)
といった要素から成り立っています。それらを体感するには、実際に足を運ぶしかありません。
写真では良いけど実物は全然良くない、あるいは写真ではイマイチだけど実物は素晴らしい、ということが有り得ます。
建築を訪れて、実際に体感しましょう!
目の前の建築に集中する
とにかく、目の前の建築に集中しましょう。
自分の感覚を研ぎ澄ませて、空間の中に佇んだり、歩き回ったり、座ってみたりしましょう。
私はこのとき、事前に調べてきた予備知識は一旦忘れるようにします。
知識ではなくて、目の前の建築に集中しましょう。
大きく感じるか小さく感じるか、重たい感じなのか軽やかなのか、開かれた感じなのか閉じた感じなのか、
実際に訪れないとわからない感覚的な部分に集中しましょう。
建築は「理性」と「感性」の両方で設計するものです。
理性の部分は本や雑誌で十分学べますので、見学の際は「感性」を働かせることに比重を置きましょう。
友人と行って意見交換
見学を充実したものにするには、友人と共に訪れ、意見交換をすると良いと思います。
まずは個々にまわって、しばらくしてから合流という流れが良いでしょう。
別視点からの意見を貰えたり、自分が見落としていた部分を教えてもらうことができます。
互いにペースを崩さずに見学できて、かつ意見を押し付けてこない友人と見学しましょう。
友人と「あーだこーだ」言いながら、
建築について考える時間はとても大切です!
好き嫌い議論はあまり意味がない
建築を見学して「好き」とか「嫌い」とか、「かっこいい」とか「かわいい」しか感想が出てこないのは、言語化不足かもしれません…。
「美味しい」しか言わないグルメレポーターと同じようなもの。
そうした感想を持つこと自体は自然なのですが、安易なコメントしか行わないのは、自分のためになりません。
設計者である以上は、見学した建築のコメントができる方が良いでしょう。
見学時は「感性」をフルに働かせて
⇩
見学後は「理性」を働かせる
言語化することは難しいのですが、
言語化した方が設計にも活かしやすくなります。
「なぜ好きだと感じたのか?」
「どこがかっこいいと思ったのか?」
「気持ちよさの要因はなんだったのか?」
一歩踏み込んで言語化することは実は簡単では有りませんが、そのちょっとした頭を追い込む経験が、建築の理解を推し進めてくれます。
試しに、「好き」「嫌い」「かっこいい」「かわいい」「きれい」という単語を使うのを禁止してみてください。
禁止すると、かなり頭を働かせないとコメントできないので、言語化能力が鍛えられますよ!
早速、友達を誘って建築見学の予定を立てましょう!
コンペや卒業設計展の上位者の共通点を探る
リサーチは、設計力を上げるうえでとても大切なことです。
レベルの高い作品の数々をみて、その共通点を探りましょう。
いまやほとんどのコンペや卒業設計作品の情報がネットや本で見ることができます。
それらはお手本として、有益であることは間違いありません。
少し検索すれば出てくるのに見ない、なんてことはあり得ません。
厳しい言い方ですが、
簡単に得られる情報を得ないのは、
手抜き以外のなにものでもありません。
本やネットでひたすら情報をかき集める
「建築 コンペ」や「建築 卒業設計」と調べれば、情報がたくさん出てくるので、チェックしましょう。また「新建築」などの雑誌の初めの方のページにアイディアコンペの結果が掲載されていることもあるので、それもチェックです。
有名なコンペ情報サイトは下記の3つです!必要なときに、自分の好みのサイトを使ってみてください。
上記のサイトに登場しますが、学生が参加できる有名なコンペはこの辺りです。これらのコンペで入選するのは、かなりの実力者です。在学中に、いくつかは挑戦してみましょう!
また、学生の集大成でもある卒業設計は、学内だけではなく全国規模でも競われます。
下記の卒業設計展で上位者に入ることは、多くの学生の目標でしょう。
雑誌も出ているので、数年分は買って手元に置いて置きましょう。
卒業設計については、別記事を投稿予定ですので、お待ちください。
集めた情報を精読
収集した情報は以下の観点から分析しましょう。
- コンセプト(社会的なテーマ、地域性、用途、特殊な空間、アクティビティ等にまつわること)
- アイディア
- 具体的な設計内容
- 成果品の表現方法
優秀な作品は、おおよそ1〜4の観点で目を見張るものがあります。
設計案だけでなく、審査員による「審査評」も目を通すようにしましょう。
「審査評」には「なぜその案を評価したか?」が書かれていますので、非常に勉強になります。
設計課題には模範回答がありませんから、なぜ評価に差が生まれるのか分かりにくいと思います。
作品の特徴も人ごとにバラバラですし、審査員ごとに言うこともバラバラです。そんな中で、どんな設計案が評価されるのかを明言できる人はほとんどいなんじゃないでしょうか。
そんな混乱してしまいそうな状況から建築学生が脱却できるように評価を得られる全設計案の共通点を言語化しました。その内容は以下の記事をご覧ください。
➡︎【超根幹】設計課題は3つの評価軸から成っている
見るべきところは学内ではなく全国
学生が目指すべきところは学内での上位者ではなく、「全国」の上位者です。
コンペや卒業設計案をリサーチすると、自然と目指すべき目標が全国に向くのも良いところでしょう。
コンペや卒業設計展で優秀賞を取っている作品と比べて、自分の作品レベルはどうでしょうか?
建築家として活躍できるのは、ほんの数パーセントだけです。本当に茨の道だと思います。
ついつい自分に甘くなりがちですが、自分を律して高い目標に向かって頑張りましょう。
【まとめ】学んだことを設計課題でアウトプット
ここまできたら、自分なりにアウトプットするだけです。
最初のうちは、どこかで見た案にどことなく似てしまったり、ということもあるでしょう。
でもそれは気にしなくても大丈夫です。
多かれ少なかれ、みんな真似事からスタートします。
繰り返しアウトプットしていく中で、段々と自分の色が滲み出ていくものです。
「本」も「建築見学」も「コンペ・卒業設計案」も、学んだこと全てが血となり肉となります。
地道にコツコツと、がんばりましょう!