■ 自分にはセンスがない…
■ センスは生まれつきのものだから…
■ センスある人が羨ましい
そんなふうにみんな一度は思ったことあるよね?
いまさらしょうがないと思いつつ、しょっちゅう思うことあるよ…。
いまさら、なんてことはないよ。
でもセンスって生まれ持ったものでしょ?努力でカバーするしかないと思って頑張ってるんだけど…
まあそれも間違ってはないんだけど、センスはこれからでも身に付けられるよ!
え、そうなの??
しかも誰でも身につけることができるんだ。そのことは、この本が教えてくれるよ。
今からでも「センスの良い人」になることがでるんだ!
私自身、この本にはとても勇気をもらいました。
建築学科に入学した当初は、建築にもデザインにも芸術にも関心がなく、相当無頓着な部類だったと思います。
私はこの本を読み、信じて実践した結果、在学中設計課題の通算成績は学年1位となり、最大手の設計事務所に入ることができました。
いまでも自分にものすごいセンスがあるとは思っていませんが、有難いことに時折「センスがある」と言ってもらえるようになりました。
当記事はこの本の内容を「建築」に寄せて、特に「建築学生」にとって有用になるように書きましたにで、ぜひご覧ください。
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センスとは何か?言い換えると「数値化できないことを最適化すること」
「センスのよさ」とは、数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力である。
センスは知識からはじまる/水野学
「かっこいい」
「きれい」
「良い感じ」
そうした数値化できないものを適宜判断して最適な答えを出す能力、それが「センス」であると、この本では定義されています。
これを建築に置き換えると「センスの良い設計」とは、置かれた条件の中で「かっこいい」とか「きれい」とか「良い感じ」というのを最適化した設計ができる能力となります。
誰にでも「センス」はある
誰でも子供の頃は
「大胆な色使いな絵を描いたり」
「大声で歌を歌ったり」
していたと思います。
それが小学生・中学生・高校生と進むにつれて、授業で点数が付いたり、
他の人と比べられるうちにほとんどの人は
「自分にはセンスがない…」
と自信を失っていきます。
やがてほとんどの人は「センス」を発揮することすらしなくなります。
本当は、それぞれに個別の「センス」を持っているはずなのにです。
学年が進むにつれて、多くの人は「センスとは無縁だ」と思うようになってしまいます。
建築を学び始めて設計課題が始まると、多くの人がこのような状態に陥ると思います。
評価されないことを恐れて、自分の「センス」を押さえつける必要はないよ。
人と違うことが恥ずかしくて、隠してしまう気持ちは分かるよ…。
むしろ、人と違う感性があるのは良いことだよ!誰にでもセンスはあるものだし、さらに成長させることができるんだ。
「センス」へのハードルが高まりすぎている
「センス」は一部の特別な人だけのものとして考えられていると思います。
芸術的な絵
美しい写真
奇跡的な造形
︙
「そんなもの自分に生み出せるはずがない」と。
たしかに世界のトップに立つような「センス」を身に付けられるかどうかは証明しようがありません。
でも少なくとも、国内の上位数%に入るレベルであれば、必ず身に付けられると考えています。
「センス」とは直感的なものだと思われることが多いけど、直感は「脳内で瞬時に行われる、判断の束」だよ。
何個も判断が集まったものだから、直感は超論理的なものってこと?
その通り!下手な理論よりも断然直感の方が正しいことは多いんだ。
意外だね!!
直感を導き出すのは頭脳だから、頭脳を鍛えること=センスを鍛えることなんだ!
なるほど!センスは鍛えられる気がしてきたぞ!
「センス」が必要とされる時代
技術がピークを迎えるとセンスの時代がやってくる
センスは知識からはじまる/水野学
歴史を眺めてみると、技術が劇的な進化を遂げるとセンスの時代が来て、しばらくするとまた技術の時代がやって来るという“サイクル”が感じられます。
センスは知識からはじまる/水野学
IT革命によって、人類はものすごい発達を遂げました。
建築業界にとっても環境シミュレーション技術やBIM化等が進み、これまでとは比較にならないほどのスピードや正確性で建物を設計できるようになりました。
そして、コストさえ合えば、技術的に作れない形は存在しない、というレベルにまできています。
ここまでくると、技術の向上は頭打ちになります。劇的な技術進歩が起きにくくなっています。
ザハ・ハディドやフランク・O・ゲーリーの自由自在な建物を見ると、なんでもできるんだなって思うよね。
少し前までは「技術的にスゴい」ということ自体が提案になっていたけど、もうそこで勝負することは難しい状況だと思うよ。
そうすると、「どうつくるか?」よりも「何をつくるか?」が大切になりそうですね。
鋭いね!だからこそ「センス」が求められる時代なんだ。技術向上で数値を追っていた時代から、数値化できないセンスを求める時代に移行したんだ。
「センス」は「知識」からはじまる
センスとは知識の集積である。これが僕の考えです。
センスは知識からはじまる/水野学
知識というのは紙のようなもので、センスとは絵のようなものです。
センスは知識からはじまる/水野学
紙が大きければ大きいほど、そこに描れる絵は自由でおおらかなもになる可能性が高くなっていきます。
設計することをイメージしましょう。
例えば、
5個の素材しか知らない人と、50個の素材を知っている人
どちらが目的にあった設計ができるでしょうか?
どちらがクライアントに喜ばれる設計ができるでしょうか?
結果は明らかですね。より多くの素材を知っている方が良い設計ができる。
これは事実だと思います。
例として素材を上げましたが、構造や構法、環境技術や形などでもより多くの知識を持っている方が、センスの良い設計をできるというのは事実です。
ひらめきは待っていてもやってこない。知識を取り入れる
アウトプットの前段階においては、知識にもとづいた方向性の決定が大切だということです。
センスは知識からはじまる/水野学
「画期的なアイディア」や「新しいアイディア」を生み出すためには、過去のあらゆるものを知識として蓄えておくことが大いに役立ちます。
あらゆるものには、画期的でも、新しくもない「なんでもないもの」や「むしろ良くないもの」も含みます。
過去のあらゆるものの知識があることで、アイディアの方向性をある程度定めることができるとのことです。
例えば、「住宅」を設計しようとしたときに過去の事例を100個知っていれば、
「この方針は、〇〇の事例を見る限り上手くいかないからやめておこう」
とか
「△△のテーマはあまり着目されていないから、取り組む意義があるかも知れない」
といったように、ある程度の目処をつけることができます。
知識があれば、先人たちの積み上げて築いた山の上に立ち、遠くを見渡すことができます。
センスとはつまり、研鑽によって誰でも手にできる能力と言えます。決して生まれつきの才能ではないのです。
センスは知識からはじまる/水野学
「知識」の身に付け方を解説
知識を効果的に手に入れる3ステップ
- 「王道」を把握する
- 「最前線」を知る
- 「ルール」を探る
①「王道」を把握する
「王道」を建築分野で言い換えると
①良いとされている建築
②定番の設計内容
③長い期間語られている建築家
になると思います。
①良いとされている建築は以下の GA japan 163と169を読むのが良いでしょう。
この2冊で日本の主要な建築をかなり網羅することができます。
必ず買って手元に置いておくべき号です。
②定番の設計内容は新建築・住宅特集を20~30冊読むことで知ることができます。
大変かと思うかも知れませんが、このくらいは最低限のラインだと思います。
図書館などで読み、特に気になるごうがあったら購入して手元に置いておきましょう。
両雑誌とも網羅性が高く、幅広く・多くの事例を知ることができます。
ある程度の冊数読んでいると、定番が感覚的にわかってくると思います。
③長い期間語られている建築家は以下の記事にまとめましたので、ご一読ください。
建築学生であれば必ず知っておきたい建築家のみ紹介しています。
⇒ 必ず知っておきたい、建築学生が学ぶべき超有名建築家12組を紹介【日本編】
②「最前線」を知る
「王道」を把握したら、次に「最前線」を知ることを行います。
「王道」がある程度の期間を経て定着したことに対して、「最前線」にあることは一過性のものであることが高いですが、未来を垣間見れる可能性もあります。
「王道」と「最前線」の両方を知っておくことで、過去・現在・未来を捉えた知識を得ることができます。
「最前線」を知るためには、GA japan と Casa BRUTAUS の新しい号をチェックしましょう。
建築はそこまで移り変わりが激しいわけではないので、直近1~2年くらいの号に目を通せれば良いと思います。
非常に良くトピックスがまとまっており、精査された情報のみが掲載されています。
インターネット情報やSNS情報の方が即効性は高いですが、情報の質で言うと雑誌の方が断然高いよ。
③「ルール」を探る
第3段階は、分析や解釈のフェーズです。
「王道」「最前線」の知識が身に付いたら、その中から「ルール」を自分なりに探りましょう。
「センスの良い空間」
「センスの良い造形」
「センスの良いプランニング」
︙
それらに共通する「ルール」は何か?
知識のない状態であれば見当も付かなかったでしょうが、知識がついていれば見出せるものがあるはずです。
いろんな角度から「ルール」を探してみよう!「センス」が知識の集積である以上、「センスが良いことの理由」は必ず説明できるはず。
精度の高い「センス」をつくり出すには「知識」の言語化が大切
「感覚的に、これがいいと思うんです。」は禁句。かっこいいから、かわいいからといった漠然とした表現も一切しません。
センスは知識からはじまる/水野学
感覚とは知識の集合体です。その書体を「美しいな」と感じる背景には、これまで僕が美しいと思ってきた、ありとあらゆるものたちがあります。
センスは知識からはじまる/水野学
「ルール」を見いだせたら、あとはその精度を高めるのみです。
例えば、「気持ちの良い空間」について3人が感想を述べたとしましょう。
■ Aさん:「天井が高くて気持ちが良い」
■ Bさん:「平面の広さに対して、比較的天井が高くて気持ちが良い」
■ Cさん:「空間のプロポーションやスケール感が〇〇と似ていてとても気持ち良い。それに天井が視界に入らないので開放感がある。」
この3人では、得られた「知識」の精度が全く違いますよね。
同じような設計をしたとしたら、精度の高いCさんが最もセンスの良い設計をすることは明らかでしょう。
感覚的なことでも、言語化の努力をすることで「センス」の精度が高まるよ。
「センス」は思ったよりも言語化できるんだね。
その通り!多くの人がこれを怠りがちだけど、それは大変な機会損失になってしまうよ。
感覚的なことでも意識して言語化するようにしてみる!
「センス」の磨き方
ここからは、「センス」の磨き方の具体例を紹介していきます。
好き嫌いでものごとを見ない
「知識」の収集には客観性がとても大切です。
好き嫌いの感想だけを述べていても、その人の現状のセンスの範囲内から抜け出せません。
好き嫌いといった主観的な感想は一旦置いておきましょう。
「〇〇の店舗の内装がかわいくて好き」
ではなくて、
〇〇の店舗のスケール感、素材、動線、明るさ…、そういった具体的な部分を客観的に把握するようにしましょう。
「〇〇の店舗は、こじんまりとしたスケール感で親しみが湧き、内装材は手触りの良い素材感になっている。視線があえて抜けないようになっていて、散策するような動線計画になっている。少し明るさを抑えてあり長居したくなるような空間になっている。」
具体的に、客観的に情報を収集しよう!
思い込みの枠を外す
思い込みは「知識」に偏りを生み出し、しかも無意識なのでやっかいです。
その思い込みを取っ払うには、普段と違うことをすること。
オススメは以下のことです。
■ 今まで触れたことのない建築家の建物を見学したり本を読む
■ 他大学の建築学生と交流する
■ 建築以外の分野の芸術やデザインの展示会に行ったり本を読む
こうしたことを定期的に行うことで、視野が広がり客観性も増します。
新しい領域に初めて関わるとき多くの人は拒絶しがちですので、全てを受け入れる気持ちを持って臨みましょう。
無意識の思い込みを、意識的に取り払おう!
「感受性」と「好奇心」で新鮮な感性を取り戻す
水野学さんは、知識を吸収して自分のものにするためには「感受性」と「好奇心」が必要だとおっしゃっています。
外界の刺激・印象を受けいれる能力。物を感じとる能力。
珍しいことや未知のことなどに興味をもつ心。
この2つを手に入れるには、自分をコントロールして、普段から意識するしかないのかなと思います。
アンテナを張って色んなものに関心を示し、新しい物事に触れたときは拒絶せずとにかく受け止める。
この流れを日常化できたとき、自然と知識は増えていくとのことです。
まとめ:「センス」を諦める必要はない。
「センス」は生まれ持ったものではなく身に付けられる。
これは多くの人にとって救いになることではないでしょうか。
自分にとってもそうでした。
一方で「センス」は頑張れば身に付くのだから、
「センスがない」というのは「≒努力が足りない」ということです。
もう結果が出ないことを「センス」のせいにはできませんね。
一緒に頑張ろう!
ではでは。